チームが勝てば「選手のおかげ」と言う指揮官が、チームがうまく回っている状況について問われれば「ジェイ(藤井ヘッド)が本当によくやってくれている」と言う。
阪神バッテリーコーチとしての役目を終えた昨年オフ、着信音とともに携帯画面に「新井貴浩」と表示されたのを確認して、通話ボタンを押した。いつもの明るい声のまま告げられた言葉に、虚を突かれた。「監督をやることになった。藤井、一緒に来てくれへんか? ヘッドコーチやってくれんか?」
「何、言うてんの?」思わず突っ込んだ。冗談だと思ったからだ。だが、返ってくるのは笑い声ではなく、同じ言葉。それでもやはり、笑って突っ込んだ。何度か同じやりとりを繰り返すうちに、受話口から聞こえる声が本気だと分かった。不安がなかったわけではない。ただ、自然と高鳴る胸の鼓動が、答えだった。
数日後、電話ではなく、直接会って答えを告げた。新井監督も大切にする「フェーストゥフェース」で、ともに戦う意思を伝えた。
現役時代を含め5球団目となる新天地は広島に決まった。
「新井監督に請われて広島に来た。新井監督を優勝させることしか考えていない。新井監督が辞めるときが、僕が辞めるとき」
立場を守ろうとする保身の言葉はひとつも聞かれない。終わりを覚悟して指導に臨む気概を持ったコーチは、意外と少ない。新井監督と一蓮托生——。批判も責任もすべて受け入れる覚悟があるからこそ、芯がブレない。後半戦もチームが頂点に立つために、黒縁眼鏡の奥の瞳を光らせる。
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Source: 広島東洋カープまとめブログ | かーぷぶーん