田中幹は、小さな体で試合を大きく動かすことができる。0―0の2回の守り。2死二塁での上武大の1番・島村大樹の打球は、三遊間の真ん中に転がった。抜ければ1点。しかし、田中幹はダイビングしてバックハンドで捕球すると、素早く起き上がり一塁へ正確に送球し、アウトにした。
「攻められた時に、相手に流れを渡さなかった。勝敗の分かれ道になった」と生田勉監督(56)は振り返る。直後の3回1死一、三塁の場面で打席に入った田中幹は、低めの直球をコンパクトに振り抜いてライナーで左前へ運び、先取点を奪った。その後も打線がつながり、一挙4得点。基点は、守りのビッグプレーにあった。
昨夏、潰瘍性大腸炎という国指定の難病に襲われた。約3か月の入院生活を経て、練習に合流したのは今年2月後半。それでも「プロになりたい」という信念のもと、ストイックに練習に取り組み、リーグ戦に間に合わせた。その姿にチームメートが奮起。生田監督が「30年間、コーチ、監督を務めさせてもらっているなか、一番弱い」というチームが20年ぶりに頂点に立った。自身にとっての初Vにも「実感がない。チームが課題を持ってうまくなってくれたことが一番うれしい」。まさに、無欲の優勝だった。
決勝という大舞台での好守と2安打。その活躍は偶然ではないと、日本ハム・坂本スカウトがうなずいていた。「普段の練習から、集中力を持って実直に野球と向き合っている。そこに勝負強さが生まれる」。8回の最終打席での二塁へのライナーが捕球されても、田中幹はスピードを落とさず全力で一塁ベースを駆け抜けた。「ひたむきに取り組むことが大事」という自身のモットーを実践し続ける姿が、そこにあった。
https://hochi.news/articles/20220612-OHT1T51206.html
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Source: ファイターズ王国@日ハムまとめブログ